事業のために法人が車を購入する場合、法人名義で契約を行います。購入台数が多いなどを理由にローンを使って購入する法人の方もいるでしょう。しかし、法人向けカーローンはどれを選べばよいのか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
この記事では、法人におすすめのカーローンを紹介します。最後まで読んで社用車購入に適切な方法を見つけましょう。
法人向けカーローンを利用するための基本知識
カーローンを契約する際、法人名義か個人名義かによって必要書類や得られるメリットは異なります。まずは法人向けカーローンを利用するための基本的な知識をおさらいしましょう。
法人名義で車を購入すると節税につながる
法人名義で購入した車は、購入後にかかる維持費を必要経費として計上できる魅力があります。車の維持費には、例えば燃料代・保険料・車検費用・自動車税といったものがあり、定期的な支払いが必要です。
所有台数や車の使用頻度に応じてかかる維持費は異なりますが、年間で20万円~30万円を超えることもあるでしょう。法人名義の車はこれらの維持費を計上することで、節税効果が期待できます。
法人向けと個人向けでは何が違う?
法人名義で契約した車は、個人向けと違ってビジネスを目的に利用できます。ビジネス以外で使用する車は法人名義で契約ができません。法人名義で契約しているにもかかわらず、その車で旅行に家族旅行に出かける、子どもの送迎や買い物のために使用しているといった場合は「個人使用」と見なされて税務調査による指摘を受ける可能性があります。
また、ビジネスを目的としているため、重機やトラック、コンテナーなど事業で使用するものもローン契約が可能です。この他、タイヤなどの消耗品、メンテナンス費用なども融資対象に含まれます。
法人向けカーローンの契約で用意する書類
カーローンの審査や契約をスムーズに進めるためには、必要書類をしっかりと準備しておくことが大切です。以下に法人向けカーローンの審査や契約で必要な書類を紹介します。
・決算書
決算書は、貸借対照表・株主資本等変動計算書・損益計算書・個別注記表がセットになったものです。決算書の内容から企業の財務状況をチェックします。直近決算期分のみだけでなく、3期分の決算書を用意しておくと安心です。
・納税証明書
財務状況や適切な納税を行っているかをチェックします。
・登記簿謄本
登記簿謄本には、不動産の所有者名や住所が記載されています。法人が本当に存在するのかを確認するために用いる書類です。オンラインで取得できますが、手元に届くまで時間を要することから、余裕を持って準備することが大切です。
・自動車保管場所証明書
個人名義で記入する場合と異なり、法人名義の場合は「使用の本拠の位置」の記入に注意しましょう。
・本人確認書類
運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証、パスポートなどを使います。
業務に適さない車は購入できない
「維持費を経費計上できるのであれば、その分価格の高い車に乗れるのではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、法人名義でカーローンを組む際は車種の選択にも注意が必要です。明確な制限は設けられていないものの、事業内容にそぐわない車や社用車に適さない車は税務署から指摘されることも考えられます。
高級車やスポーツカーを購入したからといって、全てが社用車として認められないわけではありません。業務のみに使用していることが証明できれば、税務調査での指摘も受けないでしょう。疑われるリスクを避けるには、出張履歴や走行の記録が必要です。
法人名義でカーローンを組むとどこまで経費になる?
事業を安定的に続けていくためには、経費を正しく計上して税金の負担を減らし、利益の最大化を図ることが大切です。誤った経費計上を行うと損をするだけでなく、税務調査による指摘や企業の信頼性を損なう恐れもあります。
車をローンで購入する場合、どこまで経費計上できるかを知っておくことが大切です。ここでは、どこまでが経費として認められるのかを紹介します。
利息だけが経費に当たる
法人向けカーローンに限らず、ローンを利用して車を購入する場合、ローンの元本と利息分を返済します。経費計上する際は、元本部分を除いた利息分のみ計上しなければなりません。
元本を経費計上できないのは、負債として処理するためです。利息分のような経費計上できない代わりとして、減価償却を用いて耐用年数分を経費として処理します。減価償却については、後述します。
維持費も経費として計上できる
車は購入時だけでなく、維持していくための費用がかかります。例えば、燃料代・ETC料金・メンテナンス費用・車検費用・自動車税・任意保険料などです。法人名義で購入する場合、これらの維持費は経費として計上が可能です。
一般的に、税金の計上には「租税公課」と呼ばれる勘定科目を使用します。車検時に支払う自賠責保険料、任意保険料で使用する勘定科目は「損害保険料」です。この他、車の維持管理に関するものは「車両費」として計上します。
定額法もしくは定率法で減価償却する
車は固定資産に当たるため、経年に伴う価値の減少に合わせて費用を計上する「減価償却」を行います。減価償却の方法は「定額法」と「定率法」の2種類です。
定額法は、毎年同じ金額を経費計上する方法で、以下の計算式を用います。
減価償却額=車の取得金額×定額法の償却率
取得金額100万円、耐用年数5年(償却率0.2)の場合、減価償却額は20万円と計算でき、毎年20万円を5年間経費計上できることが分かります。このように定額法は計算式もシンプルなのが特徴です。
定率法は、未償却分に対して一定割合を経費計上する方法で、以下の計算式を用います。
減価償却額=未償却分残高×定率法の償却率
定額法と比べて定率法は、その計算方法から購入した年度に計上する経費が大きくなるのが特徴です。基本的には自社のメリットが大きいほうを採用するのが望ましいといえますが、法人の多くは定率法を採用している傾向にあります。
法人がカーローン以外に選択できる購入方法
カーローン以外で車を購入するには、現金一括とカーリースがあります。どちらもメリットとデメリットがあり、自社の資金力や事業計画、必要な車両台数などに応じて決めることが大切です。ここでは、現金一括とカーリースの特徴を紹介します。カーローン以外にも購入の選択肢を広げたい方は、参考にしてください。
現金一括
現金一括で車を購入する場合、まとまった資金が必要です。車両本体代金・自動車重量税・自賠責保険料などさまざまな費用を一度に支払う必要があるため、十分な資金力がなければこの方法を選ぶのは困難でしょう。購入できたとしてもメンテナンス費用や燃料代といった維持費もかかります。
しかし、購入予定台数が少なければ、メリットを感じられる方法でもあります。現金一括で購入すると所有権は自社名義にできるため、資金繰りに困った際に売約できて資金に充てることも可能です。
カーリース
カーリースとは、カーリース会社に月額料金を支払って車に乗れるサービスです。法人がカーリースを利用する場合、リース料金を経費計上できます。通常、車を購入するにはメンテナンス費用・任意保険料・車両本体代・各税金などさまざまな費用がかかります。リース会社によってはリース期間中に維持費を支払わずに済むプランの選択も可能です。
しかし、カーリースにも「途中解約できない」「リース期間終了時に違約金発生リスクがある」「総支払額が高くなる」といったデメリットもあります。また、リース車両は走行距離の制限が設けられているのが一般的です。そのため、事業目的でカーリースを契約する場合、メリットだけでなくこのようなリスクがあることも理解した上で契約を結ぶことが大切です。
法人向けカーローンで見られる3つの審査内容と対策
個人を対象としたカーローンは、収入などから支払い能力をチェックしますが、法人向けカーローンの審査では「会社の信用度」「会社の財務状況」「事業内容」から返済能力の高さをチェックします。起業して日が浅いと審査通過ができるか不安になるでしょう。ここでは、審査内容と対策を紹介します。
会社の信用度
会社の信用度は、企業規模・資本金・設立日などから判断します。特に設立日は重要で、設立してから年数がたっていない場合「継続年数が少なく信用度が低い」と判断されることもあるため、注意が必要です。
また、ビジネスを円滑に運営するための元手金である資本金と借入希望額のバランスも大切です。資本金が多いほど企業の信頼性は高く判断されるでしょう。借入希望額が多過ぎると返済が難しいのではないかと思われることもあるため、注意が必要です。
会社の財務状況
貸主にとって、融資したお金がしっかりと返済されるかは重要なポイントです。返済能力を見極めるために財務状況もチェックされます。
負債残高が多い、連続して赤字が続いているといった財務状況であれば返済能力が低いと判断され、融資実行の可能性は低いといえるでしょう。しかし、事業を立ち上げて間もなければ、赤字が続くこともあります。このような状態の場合は、将来的にどれほどの利益獲得を予測しているのか、事業の成長性などを説明できる事業計画書を準備するのがおすすめです。
事業内容
自社がどのような事業を行っているのか説明も必要です。事業内容は言葉で説明することも可能ですが、分かりやすく説明するために資料を用意する方法もあります。
この際、車の使用目的も尋ねられるでしょう。営業用・配達用など、具体的な使用目的を示せるように準備することが大切です。貸主は、説明された事業内容とローンで購入する車の使用目的に問題がないかを判断します。
法人向けカーローンおすすめ5選
法人向けカーローンは、カーローンという名称ではなく「ビジネスローン」や「法人用フリーローン」などという名称で提供されているのが一般的です。資金をビジネス全般に使えるものが多く、車の購入費用だけでなく設備投資に使いたい場合にも役立ちます。ここでは、代表的な法人向けカーローンを5つ紹介します。
オリコ
オリコは、法人・個人事業主向けローン「ビジネスサポートプラン」を提供しています。事業歴1年以上でも申し込めるため、事業立ち上げから間もない法人の方でも利用が可能です。申し込みのたびに証書貸付契約を締結する「証書貸付タイプ」、あらかじめ資金枠を決める「クレジットライン設定タイプ」があります。以下は証書貸付タイプの基本情報です。
毎月の返済額 |
元利均等返済 |
手数料 |
非公開 |
金利タイプ |
実質年率 |
利率 |
6.0%~15.0%(新規は8.4%~15.0%) |
返済期間 |
最長5年 |
融資限度額 |
100万円~1,000万円 |
契約の条件 |
・事業歴1年以上であること。 ・直近決算期に債務超過がないこと |
北央信用組合
北央信用組合は、ビジネスカーローン「尽力車」を提供しています。営業車やトラック、重機、コンテナーなどの購入費用に充てられる他、タイヤの購入費用・車検費用といった維持費としても利用が可能です。
毎月の返済額 |
元金または元利分割返済 |
手数料 |
非公開 |
金利タイプ |
固定金利 |
利率 |
2.0%以内 |
返済期間 |
7年以内 |
融資限度額 |
5,000万円 |
契約の条件 |
組合員への加入 |
株式会社オークサービス
株式会社オークサービスは、ビジネスサポートローンを提供しています。返済期間は他のローンよりも短いものの、利息が日割り計算のため負担を抑えられるのが魅力です。
毎月の返済額 |
一括返済 |
手数料 |
例:100万円の場合1万2,328円 |
金利タイプ |
実質年率 |
利率 |
15.0%~18.0% |
返済期間 |
貸付日翌月の応答日前日(金融機関の休業日に当たる際は翌営業日) |
融資限度額 |
300万円 |
契約の条件 |
非公開 |
大垣共立銀行
大垣共立銀行は、法人向けのフリーローン「キラット」を提供しています。すでに大垣共立銀行との取引があれば、インターネット上で契約まで完結が可能です。
毎月の返済額 |
5,000円以上 |
手数料 |
0円 |
金利タイプ |
固定金利 |
利率 |
6.8%・8.8%・10.8%・12.8%・14.8%のいずれか |
返済期間 |
6か月~10年 |
融資限度額 |
10万円~500万円 |
契約の条件 |
・申し込み時点で20歳以上、最終返済時75歳以下の方。 ・・代表者が日本国籍、もしくは日本永住権を取得している外国籍の方。 ・安定的な収入が継続してある方。 ・取り扱い可能エリア(岐阜県・愛知県全域、および三重県・滋賀県・静岡県一部地域)に事業所がある方。 |
PayPay銀行
PayPay銀行は、法人向けローンとして「ビジネスローン」を提供しています。連帯保証は原則として必要ですが、担保要らずで最大1,000万円まで借り入れが可能です。事業資金を目的としていれば借りられるため、車の購入費用だけでなく、設備投資などの資金として使いたい方にも適しています。
毎月の返済額 |
2,000円~13万円 |
手数料 |
0円 |
金利タイプ |
変動金利 |
利率 |
1.8%~13.8% |
返済期間 |
指定なし |
融資限度額 |
1,000万円 |
契約の条件 |
・代表者が日本国籍、もしくは日本永住権を取得している外国籍の方。 ・事業歴2年以上、もしくは決算第2期終了している方。 ・20歳以上69歳以下の方。 |
法人向けカーローンを契約する際の注意点
法人向けカーローンを利用する前にいくつか把握しておきたい注意ポイントがあります。これらの注意点を理解してから、どの法人向けカーローンにするのかを決めましょう。
経理処理が煩雑になる
法人向けカーローンを利用すると、一般的なローンと同じように計画に沿って毎月返済を行います。しかし、一般的なローンと異なるのは、返済額を経費として処理できない点です。経費計上できるのは利息と維持費のみで、車そのものの購入費用は減価償却する必要があります。
経理処理は、会社を経営する上で重要な仕事です。経費計上できる部分とできない部分をしっかりと区別できるようにする、減価償却の方法などをしっかりと理解しておきましょう。
初期費用がかかる
法人向けカーローンは、他のローンと同じように初期費用がかかります。初期費用の具体的な内容は、自賠責保険料・自動車税(種別割)・自動車リサイクル料・自動車重量税・環境性能割といった法定費用、納車費用・車庫証明費用・登録料といった諸費用です。車両本体価格の10%~20%程度の初期費用がかかると考えておくと良いでしょう。
営業車のように複数台購入する場合、初期費用も膨れ上がって大きな負担になります。法人向けカーローンを利用するとしても、初期費用にいくらかかるのか概算し、余裕を持った準備をしておくことが大切です。
まとめ
法人がカーローンを利用する際、法人名義で契約することで節税効果があります。どのような車でも法人名義で契約できるわけではなく、あくまでも業務の使用に適していることが必要です。スポーツカーや高級輸入車など、業務内容にそぐわない車は不適切と判断されて税務調査の指摘が入るでしょう。
法人向けカーローンは、会社の信用度や財務状況、事業内容をチェックされます。会社設立から間もないなどローン審査通過が難しいと思う場合は、事業内容をアピールして将来性があることを伝えましょう。